G-J0DDFGRNC8
ひとりで見る景色は

扉の向こう側

とある喫茶店

ひとりで入るのに躊躇し、その扉の前を

2度通り過ぎる

駅からの道は、考えていた以上に長かった

道路工事で遠回りの道を

歩くはめになったからだ

夏も終わりだというのに

その日は晴れて、気温が上がった

私はひとりで外食をしたことがない

だから躊躇っている

あぁ、足がくたくただ

座りたい

3度目にドアの前に立った時

恐る恐る入店する

店内には

何人かのひとり客がいる

お好きなテーブルへどうぞ

ひとりなので遠慮して

カウンターへ座ったが

店員との距離が思ったより近く

気を取り直して、テーブル席へと向かう

2人用の席を選んで座る

平日の昼下がり

客は次々と 入ってくる

ほとんどが 女性のひとり客だ

そうなのか、知らなかった

この世界を

扉1枚向こうに広がる

この世界を

あの人の暮らしは丁寧だろうか

今朝はどんな気分で目覚めたのだろう

夢は見たのだろうか

青いワンピースがよく似合っている

同じ時間に、同じ店に座っている

それぞれの客を眺めながら

私は勝手に想像し続ける

私の家には猫がいます

バッグの中には、いつでも読めるように小説が入っています

たった今、恋人と別れました

私はどんな風に映っていますか

誰も気になどしないか

いや

ひとりずつ、バラバラでいても

言葉を交わすことはなくても

ひとりずつの私たちは

少しだけお互いの気配を感じながら

パンケーキを口に運び

コーヒーを飲んでいる

ABOUT ME
lily
空想を言葉に。いつか会う人を思いながら。

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