小春は物書きをしている。
ひとり暮らしであり、毎日をひとりで過ごす。
誰に会うわけでもなく、ただひとりなので
何もしないでいようと思うと何もしないで過ごせる。
夜更けでも夜明けでも好きな時間に、書き物だけしていればよい。
けれど小春は、毎朝決まった時間に起き、丁寧に顔を洗う。
そして9時には、PCを立ち上げる。
出かける予定などないが、毎朝顔を洗うのは怠惰への予防線である。
何もしないと何もしなくなってしまう。
着替えも億劫、髪も結ばず、雪だるま式のなし崩し。
その一線を守るために、毎朝決まった時間に起きては丁寧に顔を洗う。
小春しかいないこの家の中で、習慣という日常を大切に暮らしていく。
昨日も今日も誰とも話していない。外には3日出ていない。
1日中、家の中で書き物をしているか、キッチンで何か作っている。
意識しないと口角が下がる。孤独になりがちである。
ここ最近小春は、犬や猫を家族に迎えることをよく想像する。
しかしいつか来る別れの日を思い躊躇う。
柔らかい温もりを知ってからまた孤独へ戻ることは、どれだけ苦しいのだろう。
その喪失感に耐えられなさそうだから、未だ踏ん切りがつかずにいる。
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