ひとりに戻った、と小春は思う。
朝、目が覚めるとそれを実感する。あぁ、ひとりに戻ったんだ、と。
ここのところは毎朝だ。
子どもと別々の暮らしを始めて、2年が経つ。
親としての役目は、ほぼ終わったと言っていい。
母親のいない日常を、子どもは子ども自身で創り出している。
この先の残りの人生は、なんのためにあるのだろう。
子育てを終える今、小春の足元は情けないほどにぐらつき、歩く方向を定められずにいた。
小春は思う。
自分だけのために生きられるだろうか。
それは私を幸せにしてくれるだろうか。
子育ては、あっという間の時間だった。
なのにその時間が、私の人生すべての大きさになるなんて、とても不思議だと。
その先はご褒美みたいなものだろうか。
誰かのための役目を求められないというのは、今の小春にとって
孤独や苦しさにも似た感情があるのは事実である。
それでも、繰り返す日々を紡ぎ生きていれば、
今は見つけられなくても、いつか探し始めた何かと出会うだろう。
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