G-J0DDFGRNC8
ひとりで見る景色は

変わらないのは景色

気がついたら年を取っていたは嫌なの

年を取ることをちゃんと実感して

年を取りたいの

表紙だけで選んだ小説

きれいな水彩の絵を

指先でなぞりながら

君は言った

君がこの町に来たのは1年と少し前

夏になる頃だった

海が近くていいところだと言っていた

そして君は続ける

このままここで暮らすこともできる

平穏な毎日を生きる

時には少しのいざこざはあっても

昨日と今日と明日が

切り分けられることなくつながる

そんな気持ちにさせるような日々を

同じ山を見て 同じ空を見て

季節が移ろう音を聞くような日々を

初めはよかったように思っていたのよ

冬にたっぷり降った雪は

目を見張るような美しさだったから

その先に君が言おうとしていることが

僕にはわかる

次第に気持ちが沈むようになったんだね

気がつくと小さく小さく

心が塞ぎ込む

膝を抱えているように生きている

いつもの帰り道

夕食の支度

同じ台所に立ち続ける

年老いた自分が想像できる

動きだけは鈍くなって

君は小さな声で言う

何もない

帰りたい

元居た場所へ

ごめんね

ABOUT ME
lily
空想を言葉に。いつか会う人を思いながら。

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